研究室配属について

2026年9月 更新

研究室配属は,大学生活の中でも大きな選択の一つです.どのような研究テーマに取り組むかだけでなく,どのような環境で過ごし,何を学び,卒業するときに何ができるようになっているかによって,その後の進路や仕事の仕方まで大きく変わることがあります.教員と学生のミスマッチはお互いにとって良いことではありませんので,「入ってから思っていた研究室と違った」ということがないよう,このページでは当研究室の考え方を少し詳しく説明します.

アクチュエーション研究室では,できるだけ自由な雰囲気の中で,面白いことを考え,試し,失敗し,また考えることを大切にしています.研究室で窓の外を眺めながら「あれはなぜだろう」「こうしたら面白いのではないか」と考える時間も,大学の研究室ならではの大切な時間です.一方で,自由であることと,何もしなくてよいことは全く違います.せっかく研究室に所属するのであれば,卒業論文や修士論文を提出することだけを目的にするのではなく,卒業するときに「自分はこれができるようになった」と胸を張って言える数年間にしてほしいと考えています.

☆研究室に関する質問があれば以下からご連絡ください.見学についても空いている時間であれば基本的に歓迎しています.

研究室で身につけてほしいこと

ロボット研究というと,CADで機械を設計する,ロボットを製作する,実験をする,データをグラフにするといった作業を想像するかもしれません.もちろん,これらはすべて重要です.実際に物を作り,実験によって仮説を確かめることは,ロボティクス研究の大きな魅力でもあります.しかし,それだけで研究生活を終えてしまうのは非常にもったいないと思っています.

例えば,「なぜこのロボットはこのような動きをするのか」「なぜこの実験結果になったのか」「どのパラメータが性能を支配しているのか」「この現象を数式でどこまで説明できるのか」「同じ問題について世界ではどこまで研究されているのか」「得られたデータにはどのような誤差やノイズが含まれているのか」「もっと良い制御方法はないのか」と考え始めると,一つの実験から学べることは何倍にも増えます.

当研究室では,ロボットを「作って動かす」だけでなく,文献調査 → 問題設定 → モデリング → 機械設計 → 制御システム設計 → 組立・実験 → データ解析 → 考察・改良 → 論文執筆という研究の一連の流れを経験してほしいと考えています.最終的には,教員から細かな指示を受けなくても,問題を見つけ,自分で調べ,考え,仮説を立て,検証し,その結果から次の一手を考えられるようになることを目指してほしいと思っています.

実験だけで終わらず,理論も学んでほしい

当研究室は実際にロボットを設計・製作することの多い研究室ですが,実験系の研究室だからといって数学や力学を使わなくてよいわけではありません.むしろ,実際のロボットを深く理解しようとすると,線形代数,微分・積分,ベクトル解析,運動学,動力学,振動,制御工学,信号処理,フィルタリング,統計,データ解析,数値計算,モデリング,シミュレーションなど,学部の講義で学んだ内容が次々と必要になります.

学部時代に十分理解できなかったものがあっても構いません.研究で必要になったときに教科書をもう一度開けばよいのです.試験のために勉強していたときにはよく分からなかった数式も,自分で作ったロボットの挙動を説明するために使ってみると,突然意味が分かることがあります.それこそが研究室で学ぶ面白さの一つです.まさにProject Based Learning (PBL)です.

すべての学生に高度な理論研究を要求しているわけではありません.しかし,「文献をほとんど読まない」「モデルを一つも作らない」「データを取ってグラフを描いただけ」「先生から指示された実験だけをする」という状態で数年間を終えてしまうのは,本当にもったいないと思っています.実験が主役の研究であっても,その背景にある原理を理解しようとする姿勢を持ってほしいと思っています.

ゼミ・ミーティング

研究室では,各研究グループで2週に1回程度の定例ミーティングを行っています.研究グループのメンバーが研究の進捗状況を発表し,得られた結果,問題点,今後の方針などについて議論します.ここは研究を前へ進めるための場であると同時に,自分の考えを整理し,論理的に説明する能力を身につけるための訓練の場でもあります.研究内容によって異なりますが,1回のミーティングには十分な議論時間を確保しています.

定例ミーティングの様子

他研究室との合同ゼミも実施しています.大きな演習室で研究成果を発表し,自分の研究分野とは少し異なる研究者や学生から質問を受けることによって,研究を別の視点から見直す機会になります.2026年度後期からは王研究室(アグリフードロボティクス研究室)との合同ゼミを実施しています.

合同ゼミの様子

その他,必要に応じて教員による勉強会も行います.運動学,動力学,運動制御,回路設計,機械設計,ロボットシステム構築など,研究に必要になった内容を一緒に勉強します.もちろん,個別相談についても随時受け付けています.

研究を通して得られる力

研究テーマによって異なりますが,当研究室では,ロボットの運動を理解するための数学・運動学・動力学,数学モデルの構築,シミュレーション,CADを用いた機械設計,部品選定,加工・組立,モータ・減速機・センサなどのメカトロニクス技術,電気・電子回路,マイコン,組込みシステム,C/C++やPythonなどのプログラミング,フィードバック制御,モータ制御,センサ信号処理,フィルタリング,データ解析,学術論文の検索・読解,実験計画,論文執筆,プレゼンテーション,英語での研究説明など,さまざまな能力を身につける機会があります.

  • 数学・力学:線形代数,微分積分,ベクトル解析,運動学,剛体系の力学,動力学,振動など
  • モデリング・解析:運動方程式の導出,数値計算,シミュレーション,実験データとの比較など
  • 機械設計:CAD,機構設計,部品選定,加工,組立,3Dプリンタ,工作機械の利用など
  • 電気・電子:回路設計,マイコン,センサ,モータ,アクチュエータなど
  • プログラミング・制御:C/C++,Python,ロボット制御,モータ制御,信号処理,フィルタリングなど
  • 研究調査:英文論文の検索・読解,特許検索,先行研究調査など
  • 発信能力:論文・報告書作成,プレゼンテーション,学会発表,英語による研究発表など

しかし,最も大切なのは個別の技術そのものではありません.知らないことに出会ったときに,自分で調べ,学び,考え,試し,失敗し,また考える力です.技術はこれからも変わり続けます.大学で覚えた知識だけで,その後何十年も仕事ができる人はいません.だからこそ,研究室では「何を知っているか」だけでなく,「新しいことを自分で学べる人になること」を大切にしています.

Eマニュアル

研究室メンバーには,「Eマニュアル」と呼ばれる研究室独自の資料ウェブサイトを公開しています.過去の学生が蓄積してきたロボット研究に関するノウハウやチュートリアルをまとめたもので,力学シミュレーション,モータ制御,回路設計,機械設計,論文検索,論文執筆など,研究を進めるためのさまざまな情報を確認できます.内容は日々更新しており,教科書や学術論文と併せて利用することで,効率よく研究を進めることができます.

共同研究者との積極的な連携

当研究室では,研究室の中だけで研究を完結させず,大学,研究機関,企業,行政,実際の現場の方々との連携を積極的に行っています.2026年度現在,立命館大学内の共同研究に加えて,龍谷大学,東京科学大学などの研究機関との共同プロジェクトを進めています.また,日鉄パイプライン&エンジニアリング,協栄産業,栗本鐵工所,奥村組,Keigan,三洋化成工業などとも産学連携を進めています.

学生にも,研究内容や本人の興味に応じて,こうしたプロジェクトへ参加してもらっています.企業の技術者や他大学の研究者と議論し,実際の社会課題について考える経験は,研究室の中だけでは得られない貴重な機会です.相談や研究内容に応じて,プロジェクトに参加する学生へ対価の支払いを行う場合もあります.なお,共同研究先や研究内容は年度によって変わります.

当研究室は,2023年7月に立命館大学に設立されたESEC(宇宙地球探査研究センター,Earth and Space Exploration Center)のメンバーでもあり,希望や研究テーマに応じて,その活動へ参加することも可能です.

国際的な活動も重視しています.海外の大学・研究機関との共同研究や短期滞在を通して研究する機会を増やしていきたいと考えています.また,当研究室では海外からの留学生や短期研究者も積極的に受け入れており,日本にいながら海外の学生と一緒に研究する機会もあります.2024年度には,ノルウェーのアグデル大学やイギリスのランカスター大学から学生を受け入れました.

大学・大学院は大きな自己投資です

大学,特に大学院で過ごす時間は非常に貴重です.大学院へ進学する場合,学費だけでも年間130万円を超え,修士課程の2年間では270万円ほどになります(2026年度の情報).単純に月額へ換算すれば,毎月10万円以上を自分の教育に投資していることになります.さらに,そこには何よりも大切な20代の2年間という時間があります.

これは「高い学費を払っているのだから毎日長時間研究しなさい」という話ではありません.また,苦しまなければ元が取れないという意味でもありません.むしろ逆です.それだけ大きなお金と時間を使うのであれば,できるだけ多くのものを持って卒業してほしいのです.

同じ研究テーマに取り組んでも,言われた実験だけをして修士論文を書いた人と,論文を読み,数学モデルを作り,シミュレーションを行い,新しい制御を試し,データ解析を深く勉強し,学会で発表し,英語で論文を書き,企業や国内外の研究者と議論した人では,2年後に身についているものが大きく違います.大学院には,普通に生活しているだけではなかなか得られない機会がたくさんあります.せっかくそこにいるのに,その機会を使わないことこそ「もったいない」と考えています.

研究室に来る意味

現在,当研究室には厳密なコアタイムを設けていません.研究は単純な滞在時間だけで評価できるものではないからです.朝早く研究する人もいれば,少し遅く来る人もいますし,体調や家庭の事情もあります.朝の混雑を避けるために通学時間をずらしても構いません.出欠を細かく管理したり,タイムカードを切らせたりすることもしていません.

ただし,「コアタイムがない」=「研究室に来なくてよい」ではありません.ロボット研究は,一人でパソコンに向かっているだけではなかなか進みません.機械を作り,実験し,教員や学生同士で議論し,ちょっとした疑問をその場で相談する,その積み重ねによって研究は進みます.そのため,基本的には平日の昼間を中心に研究室で研究する生活を想定しています.

研究室では,予定されたミーティング以外の時間も非常に重要です.廊下で偶然会って「昨日のデータが少し変だったんですけど」と話したことから議論が始まったり,実験装置の前で「ここ,少しおかしくないですか」と誰かが気づいて原因が見つかったり,別の学生の研究を横から見ていて「その方法,自分の研究にも使えるのでは」と突然つながったりすることがあります.数週間悩んでいた問題が,5分の立ち話で解決することさえあります.こうした偶発的な会話は,研究室という場所の大きな価値の一つです.

一方で,お盆や年末年始,休日などに無理に研究室へ来ることを求めるつもりはありません.旅行や帰省についても,必要に応じて事前に連絡してもらえれば問題ありません.しっかり休んでリフレッシュしたり,さまざまな場所へ出かけて見聞を広めたりすることも大切だと考えています.また,参考書,工具,工作機械,コンピュータなど,研究に必要な設備をできるだけ整え,皆さんが研究しやすい環境を作ることも教員の役割だと考えています.

デジタルな連絡ツールは便利ですが,それだけでは十分な意思疎通を図れません

当研究室ではSlackやEメールも日常的に使用しています.これらは連絡,情報共有,ファイルの送受信,記録の保存には非常に便利です.しかし,私はこれらを対面コミュニケーションの代替ではなく,あくまで補助ツールだと考えています.

対面であれば,口で説明し,相手の反応を見ながら話し,その場で紙やホワイトボードに図や数式を書き,指で場所を示しながら「ここがおかしいのではないか」「いや,むしろこちらが原因ではないか」と何度も行き来しながら議論できます.一つのスケッチや数式を二人で眺めながら話すだけで,Slackで何往復もするより早く本質へたどり着くことがあります.

また,言葉そのものだけでなく,どのくらい自信を持って話しているのか,どこで迷っているのか,どの結果を本当に面白いと思っているのか,どこに違和感を感じているのかといった空気感も研究では重要です.どのくらい熱意を持って話しているかも,対面だからこそ伝わるものがあります.

さらに,研究や共同研究の現場では,すべての情報をSlackやEメールに記録することが適切とは限りません.まだ正式に決まっていない研究アイデア,論文化前の着想,企業との共同研究に関する途中段階の話,今後の研究方針についての率直な意見,組織や人間関係に関するオフレコの話など,「今この場だから話せること」があります.もちろん機密情報の取り扱いには十分な注意が必要ですが,信頼関係があるからこそ共有される情報が存在することも事実です.

同じ空間で研究し,雑談し,困っているときに助けてもらい,誰かの実験を手伝い,失敗を一緒に考え,成果が出たときには一緒に喜ぶ.そうした日々の積み重ねによって,「この人なら相談できる」「この人の意見なら聞いてみたい」「困っているなら少し手伝おう」という関係が少しずつできていきます.研究室のチームワークは制度やルールだけで生まれるものではありません.日々顔を合わせることによって生まれる信頼関係が,その土台になります.

したがって,研究室に来る意味は,単に教員に出席を確認されるためではありません.自分の研究以外の情報が耳に入り,誰かの議論を偶然聞き,ちょっとした疑問をその場で聞き,思いがけないアイデアをもらい,自分の研究についても自然に相談できるようになります.オンラインでできることが増えた時代だからこそ,対面でしか得られないものを意識して使ってほしいと思っています.

「研究室にいる時間」より「何を考えたか」

一方で,長時間研究室にいるだけで評価するつもりもありません.研究室に10時間いて,言われた作業だけを10時間していることが,本当の意味での成長とは限らないからです.

「なぜ?」「本当に?」「別の方法はないか?」「他の研究者はどうしているのか?」「この結果を数式で説明できないか?」と考えてほしいと思っています.教員から「次はこれをしてください」と言われるまで待つのではなく,「この結果からこう考えました.次はこれを確認したいです」と言えるようになれば,かなり研究者らしくなっています.

学部4年生の最初からそれができる必要はありません.最初は分からなくて当然です.しかし,1年間,あるいは大学院まで進むなら3年間かけて,少しずつ「指示された仕事をする人」から「自分で研究を動かせる人」へ成長してほしいと思っています.

そのため,平日昼間にほとんど研究室に来ることができず,週に数回のゼミだけに参加するような研究生活を想定している人には,当研究室はあまり向いていません.卒業論文提出の数週間前だけ集中的に作業すれば何とかなる種類の研究でもありません.日々少しずつ考え,試し,議論し,失敗し,改良することによって初めて結果が見えてきます.

大学で勉強したことは,社会に出たら使わない?

「大学で勉強した数学なんて会社に入ったら使わない」「研究内容と同じ仕事に就くわけではないから,研究を頑張っても意味がない」という話を聞くことがありますが,私はこの考えにはあまり賛成していません.

もちろん,大学で解いた微分方程式をそのまま毎日会社で解くとは限りませんし,修士論文で扱ったロボットと全く同じ製品を就職後も開発する人ばかりではありません.しかし,研究を通して身につけた能力は,その後の仕事に驚くほどつながっています.

企業で新しい製品や技術を開発するときにも,「何を調べるべきか」「この現象は何が原因なのか」「どうモデル化すればよいか」「どんな実験をすれば仮説を検証できるか」「このデータは本当に信用できるか」「既存技術と何が違うのか」「他人にどう説明すれば納得してもらえるか」を考えます.これは研究室で行っていることと本質的に同じです.

特に研究開発,設計開発,生産技術などの仕事では,大学で学んだ数学,力学,制御,電気,プログラミングなどが直接役立つ場面も数多くあります.それ以上に重要なのが,知らないことを自分で調べ,理解し,問題を整理し,解決方法を考える力です.会社に入れば,教科書の章末問題のように「この公式を使えば解けます」と書いてある仕事はほとんどありません.答えが分からない問題に向き合い,自分で考えなければなりません.その練習を数か月,数年間かけて本気でできる場所が研究室です.

だからこそ,大学や大学院で真剣に研究した経験は,その後のキャリアと決して無関係ではありません.むしろ数年後,十数年後に大きな差となって表れる能力だと考えています.

就職活動について

もちろん,就職活動を妨げるようなことはしません.インターンシップ,企業説明会,面接などでやむを得ず研究活動を欠席する場合には配慮します.ただし,就職活動は大学の公欠とは異なる場合がありますので,必要な発表やミーティングと重なる場合には,代替方法を相談するなど,自分自身の責任でスケジュールを管理してください.

一方で,就職活動そのものが目的になり,数か月にわたって研究をほとんどしなくなる状態には注意してほしいと思っています.就職活動で企業に評価してもらうためだけに研究をする必要はありません.しかし,「自分は大学で何を考え,何を作り,何に失敗し,そこから何を学んだのか」を自分の言葉で語れる学生は,結果的に就職活動でも強いと思います.研究を頑張ることと就職活動は,本来対立するものではありません.

将来自分が何をしたいのか,研究開発やモノづくりを仕事にしたいのか,どのような働き方をしたいのかは,就職活動が始まってから突然考えるのではなく,普段から少しずつ考えておくことをお勧めします.研究開発やメーカーだけが正解ではありません.さまざまな業界で活躍している卒業生がいます.大切なのは,自分の進路を自分で考え,そのために必要な力を大学にいる間に身につけることだと思っています.

研究テーマの決め方

先輩が進めてきた研究を引き継いでも構いませんし,新しい研究テーマを自分で提案することもできます.4月から研究をスタートできるよう,配属前後に一人ひとりの興味や希望を聞きながら相談して決めます.正式な研究室配属以前であっても相談は可能です.

最初に決めた研究テーマが,研究を進める中で変化することもよくあります.文献を調べた結果,考えていた方法がすでに存在していたり,想定していた方法では問題を解決できないことが分かったりする場合もあります.実験中に,当初とは異なる面白い現象が見つかることもあります.その場合には必要に応じて方向転換します.研究とは,最初に決めた計画を何が何でも守ることではなく,得られた事実をもとに問いそのものを更新していく活動でもあります.

非常に大まかに分類すると,当研究室では以下のような方向の研究を行っています.一人で複数の分野を横断しても構いませんし,複数の学生がそれぞれ異なる役割を担当して一つのロボットシステムを作り上げても構いません.

  • 新機構・アクチュエーション:ロボットの機構や駆動原理をゼロから考え,これまでにない機能を実現します.
  • モデリング・解析:ロボットや環境との接触現象を数理モデルとして表し,理論解析やシミュレーションを行います.
  • 制御:機構の特性を生かしながら,位置,速度,力/トルクなどを制御し,新しい機能を実現します.
  • センシング・環境認識:センサ情報の利用方法や新しいセンシング原理を考え,ロボットが必要とする情報を取得します.
  • ロボットシステム統合:機構,電気,制御,認識などを組み合わせ,実際の現場で仕事のできるロボットへ統合します.

卒業・修了に必要な要件

学部

卒業研究の単位認定要件は以下です.特別な理由を除き,1年間で以下を満たしていれば,卒業研究の単位認定を行います.

  • 普段の研究室のミーティングやゼミに3分の2以上出席すること
  • 自分が担当するすべてのミーティングやゼミで発表すること
  • 卒業論文を提出し,卒業研究として必要な水準を満たしていることが確認されること
  • 卒業研究発表会でプレゼンテーションし,卒業研究として必要な水準を満たしていることが確認されること

体調不良などによりゼミやミーティングをやむを得ず欠席することもあると思います.大学の規程に基づいて公欠などの扱いを希望する場合には,必要な証明書類を提出してください.

大学院博士課程前期課程(修士)

修士論文の認定要件は以下です.特別な理由を除き,2年間の研究活動を通して以下を満たすことを求めます.

  • 普段の研究室のミーティングやゼミに3分の2以上出席すること
  • 自分が担当するすべてのミーティングやゼミで発表すること
  • M1後期に学内で開催される修士論文中間発表会で発表すること
  • 修士論文を提出し,主査・副査より修了要件を満たしていることが確認されること
  • 修士論文公聴会でプレゼンテーションし,主査・副査より修了要件を満たしていることが確認されること
  • 国内外の学会,学術講演会,国際会議などで少なくとも1回は研究成果を発表することを推奨します.または,それに相当する対外的な研究発表を行うことを推奨します.
大学院博士課程後期課程(博士)

博士課程では,自立した研究者として研究を立案・遂行し,その成果を国内外へ発信できることを目指します.主な要件は以下です.

  • 普段の研究室のミーティングやゼミに3分の2以上出席すること
    英語で発表から質疑応答までを行うInternational Seminarも含まれます.
  • 自分が担当するすべてのミーティングやゼミで発表すること
  • 毎年後期に学内で開催される博士論文中間発表会で発表すること
  • 査読付き学術論文に2本以上採録されること,または採録が決定していること
  • 博士論文を提出し,主査・副査による審査および博士学位審議委員会で承認されること
  • 博士論文公聴会でプレゼンテーションし,博士論文として必要な水準を満たしていることが確認されること
  • 国内外の学会や国際会議で継続的に研究成果を発表することを強く推奨します.

大学院進学について

大学院生については,学内・学外・海外を問わず積極的に受け入れています.一方で,「理系だから何となく大学院へ進学する」「周囲が進学するから」「修士の方が初任給が高いから」「まだ働きたくないから」といった理由だけで進学することはあまりお勧めしません.学内推薦入試を利用する場合には,研究室配属後の比較的早い時期に大学院進学を判断しなければならないことがありますので,できるだけ早く自分の進路について考えておいてください.

大学院は,学部の延長として授業を受け続ける場所ではなく,自分で研究することが中心になる場所です.だからこそ,うまく使えば非常に成長できる2年間です.今の研究をもっと深く追究したい,新しい専門知識を身につけたい,自分で考える力を鍛えたい,学会発表や論文執筆に挑戦したい,2年間を自分への投資として使いたい,そう思えるのであれば大学院は非常に価値のある場所だと思います.

大学院進学を考える人には,少なくとも以下のことを一度考えてみてほしいと思っています.

  • 研究活動そのものを面白いと思えるか?
  • 一つの問題について長い時間をかけて考えることができるか?
  • 現在の研究分野やロボティクスに興味があるか?
  • 大学院で専門知識や研究能力を身につけ,さらに成長したいか?
  • 「就職活動に有利だから」「みんな進学するから」「まだ働きたくないから」という理由だけで決めていないか?

「修士号を取ること」は目的ではなく結果に過ぎません.2年後の自分を大きく変えるために大学院を使うと考えれば,これほど恵まれた時間はなかなかありません.

学部の成績について

学部3年生までの成績だけで,その後の研究能力が決まるとは考えていません.もちろん,数学,力学,制御などの基礎学力が高ければ,新しい内容を理解する助けになります.しかし,試験で良い点を取る能力と研究能力は完全に同じではありません.

試験問題には通常,答えがあります.しかし研究には答えがありません.誰かが用意した正解を探すのではなく,自分で問いを作り,方法を考える必要があります.したがって,「これまで成績があまり良くなかったから研究には向いていない」と考える必要はありません.必要になったら勉強し直せばよいのです.逆に成績が良かった人も,これまで覚えた知識だけで研究ができるわけではありません.大切なのは,分からないものに出会ったときに,自分で勉強して理解しようとする姿勢です.

また,多少の遊び心やイタズラ心も必要だと思っています.真面目に努力することは大切ですが,ときには常識から少し外れた発想が新しい研究につながります.失敗も重要です.何度も試して失敗した経験が,後になって別の問題を解決するときの直感につながることがあります.未知の挑戦を楽しみながら,壁にぶつかっても自分で考え,行動できる人であれば,研究室に入ってから大きく成長できると思っています.

学生さんへのメッセージ

最後に,少し大袈裟な話をします.これからの日本社会をつくり,支えていく中心になるのは,今の若い世代の皆さんです.しかし,日本の若者の数は急速に減り続けています.私の世代が生まれた頃には年間140万人前後の子どもが生まれていましたが,現在ではその半分ほどになっています.非常に単純化して言えば,これからの日本は,私たちの世代のおよそ半分の人数で社会を支え,産業を動かし,世界と渡り合っていかなければならない時代に入っていきます.

もちろん,人口が多ければ幸せで,GDPが高ければそれだけで良い社会になるというつもりはありません.ただ,日本が現在の生活水準や国際的な地位を築いてきた背景には,戦後から今日まで,多くの先人たちが科学技術と産業を発展させ,社会全体の生産力を高めてきた積み重ねがあります.これから人口が減っていくのであれば,その分,一人ひとりが高い専門性を持ち,新しい価値を生み出していくことがこれまで以上に重要になると思っています.

日本は自然豊かな国ですが,一方で化石燃料や鉱物資源の多くを海外に依存しています.だからこそ日本は,知識や技術を磨き,新しい製品を生み出し,製造技術を高め,世界に価値を提供することで発展してきました.かつて「Made in Japan」は,高品質な工業製品の代名詞でもありました.

しかし,世界は止まっていません.中国,韓国,米国,欧州をはじめ,多くの国や地域が猛烈な勢いで研究開発と産業競争を続けています.現在では「日本製だから優れている」と自動的に評価してもらえる時代ではありません.海外には,日本より安く,速く,しかも高品質な製品やサービスを生み出す企業が数多くあります.

私は,これを悲観するだけの話だとは思っていません.むしろ,これから社会に出る皆さんにとっては,過去のやり方をそのまま繰り返すだけでは通用しない一方で,新しい価値を生み出す人には非常に大きなチャンスがある時代でもあります.

「とりあえず大学に入る」「とりあえず会社に就職する」「上司から言われたことだけをこなす」.それだけで一生安泰という時代は,これからますます少なくなっていくと思います.過去の成功体験や,先人が生み出したロングセラー製品だけに頼り続けることも難しくなっていくでしょう.

だからこそ,これからの技術者には,自分で問題を見つけ,知らないことを学び,既存の常識を疑い,新しいアイデアを形にし,失敗した結果から原因を考え,異なる専門を持つ人と議論し,自分たちの技術によってどのような社会をつくりたいのかまで考える力が必要になると思っています.

研究室は,そのための非常に良い訓練の場です.研究には,あらかじめ用意された正解がありません.世界中の論文を調べても答えがない問題について,自分で考えます.機械を設計し,数式を立て,プログラムを書き,実験し,失敗し,その理由を考え,また新しい方法を試します.時には教員や仲間と長時間議論し,昨日まで存在しなかったものを少しずつ形にしていきます.これは,社会に出て新しい製品や技術を生み出す仕事と非常によく似ています.

当研究室に来る皆さんには,必要以上に日本の将来を背負って思い詰めてほしいとは思っていません.一人の学生が日本経済を立て直さなければならないという話でもありません.ただ,自分たちがこれから社会の中心になる世代であることは,少しだけ意識してほしいと思っています.

科学技術とどう向き合うのか.世界にどのような技術や製品を発信するのか.ロボットやAIを使ってどのような社会をつくりたいのか.効率や利益だけではなく,人間にとって本当に良い技術とは何なのか.そもそも,技術の進歩によって何を実現したいのか.そんなことまで考えられる技術者になってほしいと思っています.

単に機械を設計できるだけでもなく,単にプログラムを書けるだけでもなく,単に数式を扱えるだけでもない.技術を深く理解した上で,「なぜこの技術をつくるのか」「これによって社会をどう変えたいのか」まで自分の言葉で語れる,哲学を持ったエンジニアになってほしいと思っています.

研究室には,失敗してもよい時間があります.分からないことを勉強し直す時間があります.自分のアイデアを試す場所があります.仲間と議論する環境があります.そして,まだ世の中に存在しないものをつくるチャンスがあります.

せっかく大学という場所にいるのですから,この環境を思い切り使ってください.最初から何でもできる必要はありません.数学が苦手でも,機械設計をしたことがなくても,プログラムがまだ十分に書けなくても構いません.ただ,知らないことを知りたい,できることを一つでも増やしたい,昨日の自分より少し成長したいという気持ちは持って来てください.

私自身も皆さんと一緒に考え,悩み,議論し,新しい技術をつくっていきたいと思っています.一緒に面白い研究をしましょう.

加古川 篤

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