2024年10月 更新
そろそろ卒業研究配属希望の時期が迫ってきました.研究室配属について教員と学生さんのミスマッチが起こると良くないため,ここで情報発信しておきます.入った後に「しまった!」ということがないように,よく読んで納得した上で希望してください!
アクチュエーション研究室(加古川研究室)はまだ新しい研究室なので日々試行錯誤しながら研究室のルールや方針などを学生の皆さんと少しずつ固めていく過程にあります.教員と学生の関係はいわば共同研究者のようなものに近いかもしれません.一緒に学び,悩みながら共に成長していきたいと考えています.
そんな発足間もない当研究室では,基本的に自由な雰囲気で楽しく面白く研究活動ができるよう心がけています.研究室でボーっと窓から空を眺めながらアレコレ物思いに耽る時間は大学の研究室の醍醐味だからです.
ただし,もちろん譲れないこともあります!このページではそんなことについても綴っています.
☆研究室に関する質問があれば以下からご連絡ください.見学についても空いている時間であれば基本的に歓迎しています.
ゼミ・ミーティング
研究室のミーティングを各グループが2週に1回行っています.研究グループの全員がパワーポイントで研究の進捗状況を発表します.ここでは,進捗状況を共有・議論し,さらに発展させることが大きな目的ですが,同時に論理的な説明能力を身につけるために訓練する場でもあります.大体1回のミーティングで1〜2時間くらいは使います.
院ゼミと呼ばれる他研究室との合同ゼミも毎週行なっています.大きな演習室でパワーポイントを使って研究発表します.こちらも週1回実施していますが,発表の順番が回ってくるのは現状では1セメスターに1回です.今後,学生増加に伴い発表巡回頻度が下がる可能性があります.1回の院ゼミは大体1授業時間(1時間30分程度)で終わるようにしています.
その他,教員による個別勉強会(運動学,動力学,運動制御,回路設計,機械設計,ロボットシステム構築など)を不定期で実施しています.もちろん,個別相談についても随時受け付けています.
得られるスキル
以下の技術を当研究室に所属する学生のみなさんに習得してもらいます.教員や研究室に蓄積した知識や技術を惜しみなく伝授します.
- ロボットの運動を扱うための,ベクトル解析,剛体系の力学
- ロボットのダイナミクスを解析するための,非線形の数理理論
- ロボットのメカを設計するための,機械設計やCAD技術,部品の加工・組み立て技術
- ロボットの電装系を設計するための,電気・電子工学,マイコンによる制御技術,回路設計,アクチュエータ工学
- ロボットの運動シミュレーションや実機の制御のための,プログラミング技術,モデリングとシミュレーション技術,3Dグラフィックス技術
- センサを使うための,センサ工学,画像処理技術(カメラを使う場合)
- 自分の研究内容・関連事項を発表するための,論文・報告書作成能力,プレゼンテーション能力,英語発表能力
- 世界の研究状況を把握するための,英文読解能力,論文検索能力,特許検索能力
- これらの活動の前提としての研究室運営のための,ネットワーク技術,システム管理技術
太字下線で書いた部分は,全員に要求する必須スキルです.それ以外の部分は,扱う研究対象に応じて身につけるスキルです.
また,研究室メンバーには「Eマニュアル」と呼ばれる資料ウェブサイトを公開しています.過去の先輩が作ったロボットに関する資料やチュートリアルのような情報がたくさん掲載されています.力学シミュレーションの方法,モータ制御の仕方,回路の作り方,論文の書き方,論文の調べ方など様々な情報を確認できますし,日々アップデートしています.教科書や論文に併せてこのページを参考にすると効率的に研究を進められます.
共同研究者との積極的な連携
当研究室では,研究室外の研究者や技術者との連携を積極的に行なっています.2024年度現在では,立命館大学内で共同研究が進んでいることはもちろんですが,龍谷大,東京科学大学(旧東京工業大学),産業技術総合研究所などの研究機関と共同プロジェクトを進めています.また,住友重機械工業,白山工業(極限環境ロボット研究所),協栄産業,奥村組,弘栄ドリームワークスなどとも共同研究や受託研究を推進しています.現在所属している学生の皆さんにも何かしらこれらに関わる研究をしてもらっていますし,これから入る学生さんについても興味があれば早い段階からこれらのプロジェクトに参画してもらうことが可能です.そのような学生さんには相談や内容に応じて経済的支援をすることがあります.ただし,日々様々な企業や研究機関などから相談があるため,これらは毎年変わる可能性があります.
当研究室は,2023年7月に立命館大学に設立されたESEC(宇宙地球探査研究センター Earth and Space Exploration Center)のメンバーにもなっていますので,この活動にも参画してもらうこともできます.
海外の大学との連携も現在計画中です.夏休みの間に学生の皆さんに海外の大学で研究してもらう・・・なんてことも実現したいと思っています.海外からの短期留学生を積極的に受け入れているため,日本にいながら海外の学生と交流することも可能です.2024年度では,ノルウェーのアグデル大学やイギリスのランカスター大学から学生を受け入れました.
コアタイム
現状ではコアタイムを設けていません.それなりに皆さん毎日研究室に来て研究に取り組んでいますので,とやかく言っていません.それに二日酔い,家庭の事情,失恋で寝込んだ,などなど不測の事態もあると思うので,いちいち出欠確認を取ったり,タイムカードを切らせるなんてこともしません.朝の通勤ラッシュを避けたいから通学時間をズラしたり工夫するのもOKです.ただし,もし,この状況が悪化するようならコアタイム制への変更を検討します.
平日は毎日大学で研究
さて,コアタイムはないと書きましたが,当然ながら楽して成長はあり得ません.ロボットエンジニアを志すのであれば,機械・電気・制御・プログラミングなど様々な分野を広く学ばなければなりません.しかも,ロボットは複数の要素・部品が複雑に組み合わさったシステム統合なので,製作にとても時間がかかります.途中で壁にぶち当たって何度もやり直しということがよくあります.そのため,学生さんには基本的に平日は毎日研究室に来て研究をしてもらっています.長期休暇中(夏休み等)であっても基本的に研究です.その分,苦労して出来上がったロボットが上手く動いたときは本当に感動します.
最近,「自分でロボットのハードウェアの設計・製作,その制御までを行いたい!」という高い目標をもった学生さんに限って,大学にはあまり来ずに他人任せにしてしまい,やりたいことに対して実際の行動が伴っていないなんてことがあります.それではいつまで経ってもロボットは完成しません.※もちろん一部です.
ただし,お盆や年末年始,休日などはお休みなので,無理に来させるようなことはしませんし,数日間,旅行や帰省する場合も事前に連絡してもらえれば全く問題ありません.むしろしっかり休んでリフレッシュしたり,色んなところへ出かけて見聞を広めたりすることもとても大事だと考えています.
また,皆さんにとって居心地の良い環境づくりも心がけています.参考書や工具・工作機械,コンピュータなど必要な設備をできるだけ揃えるようにしています.
当研究室のテーマはどれも時間がかかるものばかりで,しかも,既にある装置を使って「言われた通り,ただ作業やデータ取りの実験をすれば良い」というわけではありません.もちろんサポートはしますが,基本的には皆さんが主役であり,皆さんが主体的に研究に取り組む必要があります.そのため,平日昼間にほとんど研究室に来れないような学生さんは絶対に希望しない方が良いです.学生さんと教員のお互いが不幸になります.
配属後の4月から少しずつ地盤を固めて,色んなことを試行錯誤し,毎日みっちり議論してようやく結果が見えてくるテーマばかりです.研究室に来ない学生さんは,日常的な相談や議論をできないので,研究が全然進みません.真面目にコツコツ取り組んでいる学生さんに悪影響を与えますし,研究室の雰囲気にも馴染めないと思います.せっかく買ったコンピュータなども無駄になってしまいます.1週間に数コマ程度のゼミしか参加しない学生さんや深夜しか来ない学生さんも同様です.
特に,普段研究をしていると不定期で突発的な相談が常々発生します.そのときに研究室にいないと,そこでその話はストップしてしまいます.逆に研究室に日常的にいれば,どんどん話は進んでいくので凄い勢いで研究が進みます.
「卒業論文提出締切の数週間前だけ一夜漬け的に頑張れば卒業できるでしょ!?」という考えの人には全く向いていません.締切ギリギリになって何とかしてくださいと言われても物理的に対応しようがありません.そういう学生さんには当研究室をお勧めしません.
繰り返しますが,「平日昼間にほとんど研究室に来れないような学生さんには当研究室をお勧めしません」.
就職活動できるか?
もちろん就職活動を妨げるようなことはしません.就職活動が理由で止むを得ず研究室の活動を欠席する場合,考慮します(公欠にはなりませんが).
ただし,最近インターンシップやエントリーシート作成などに過剰な時間を費やすケースが増えてきたと感じています.それも大事な時間かもしれませんが,数ヶ月もほとんど研究室に来ないような場合,指導が入ると思っておいてください.「本業は学業である」ということを忘れてほしくはないからです.
時間を費やし過ぎる学生さんを見ていると,将来自分が何をしたいのか?どういう方向に進みたいのか?ということを人生でほとんど考えたことのない人が陥りがちであると感じています.いざ就職活動に直面した時ではなく,もっと早めに少しずつ自分の将来を考えておくことをお勧めします.少なくとも「自分が将来,研究開発やモノづくりを生業としたいのかどうか?」くらいは考えておいてほしいと思っています.もし,そうでないなら無理して大学院に進学しなくても良いですし,メーカーへの就職に拘る必要もありません.研究開発やモノづくり以外の業界でも立派で素晴らしい仕事をしている卒業生をたくさん知っています.
また,正直なところ,今は個人のスキルが問われる時代なので,実力をつければ将来何とでもなると思っています.そのため,就職活動に力を入れすぎて実力がつかないまま卒業するくらいなら,まずはしっかり学業や研究活動に励んでもらって,地盤を固めることをお勧めしていますし,そのための支援は惜しみません.色んな将来への不安があるかもしれませんが,あまり浮ついた情報だけに惑わされないことを願っています.
研究テーマの決め方
これまで先輩が進めてきた研究を引き継いでも構いませんし,新たに自分でテーマを提案することもできます.4月に研究をスタートできるように事前に一人ひとりヒアリングしながら決めるようにしています.研究室への正式な配属は毎年4月からですが,もちろんそれ以前であっても相談可能です.
最初に決めた研究テーマが後で少しずつ変わることもよくあります.文献などを調べているうちに,自分たちの方法が有効でなかったことが判明したり,そもそも新しくなかったことがわかったりすることもあります.その場合は潔く方向転換します.ただし,少しでも自分のアイデアがあるのであれば,そのままもう少しだけ追求して続けることもあります.
非常に大まかに言えば,研究テーマは以下のような分類ができると思います.皆さんの興味に応じて取り組むテーマを決定できます.もちろん全てに関連するテーマに1人で取り組んでも良いですし,複数人でそれぞれが異なる分類のテーマに取り組んで協力し合っても良いです.
- 新機構創出:ロボットの機構(メカニズム)をゼロから考えて,世の中に無い機能を果たすための研究を行います.
- 制御:ハードウェアそのものをゼロから作るより,既にあるものを使いながら制御方法に工夫を凝らしてロボットに新しい機能を持たせる取り組みです.
- 環境認識:センサ情報の新しい利用方法や新しいセンシング方法自体の提案などを行います.
卒業・修了に必要な要件
卒業研究の単位認定要件は以下です.特別な理由を除いて1年間で以下を満たしていれば,学士号が授与されます.
- 普段の研究室のミーティングやゼミに3分の2以上出席すること
- 全てのミーティングやゼミ(自分の担当する回という意味)で発表すること
- 卒業論文を提出し,卒業要件を満たしていることが確認されること(学会発表できるレベル)
- 卒業研究発表会でプレゼンテーションし,卒業要件を満たしていることが確認されること
体調不良などによりゼミやミーティングを止むを得ず欠席することがあるかもしれません.しかし,ゼミなどの欠席を公欠扱いにするなら,必ず医師の診断書など,証明書やそれに代わるモノを教員に提出してください.皆さんを信用していないわけではないですが,いくらでも嘘をつけてしまうというのも事実です.
修士論文の認定要件は以下です.特別な理由を除いて2年の間に以下を満たしていれば,修士号が授与されます.
- 普段の研究室のミーティングやゼミに3分の2以上出席すること
- 全てのミーティングやゼミ(自分の担当する回という意味)で発表すること
- M1の後期(1月)に学内で開催される修士論文中間発表会でポスター発表すること
- 修士論文を提出し,主査・副査より修了要件を満たしていることが確認されること(日本語学術誌などに投稿できるレベル)
- 修士論文公聴会でプレゼンテーションし,主査・副査より修了要件を満たしていることが確認されること
- 国内外の学会(学術講演会や国際会議)などで少なくとも1回は発表すること,あるいはそれに相当することを行うこと
大学院進学について
大学院生(博士課程前期課程)については,学内・学外・海外を問わず積極的に受け入れています.ただし,進学するかどうかは特によく考えてから決断してください.もし,学内推薦入試の受験を考えているなら,願書や研究計画書の提出は毎年5月なので研究室配属直後になります.研究も何もほとんど始まっていない時期にいきなり大学院進学を迫られるわけです.そのため,早めに具体的に考えておく必要があります.
最近,立命館大学の大学院進学ガイダンスなどでは,「最近の理系学生はみんな進学するもの」や「就職後の初任給が大学院修了者の方が高い」などの目先の理由だけで進学を推奨するケースが少なくないと個人的に考えています.
このような動機で進学した場合,研究活動自体を楽しめる人でないと,結果的に大学院での研究成果が出ずに,就職活動も上手くいかないという悪循環に陥ってしまいます.大学院では,授業がほとんどありません.なぜなら大学院は研究をするところだからです.そのため,研究室に来て研究しなければ,何のために大学院に進学したのかわからなくなります.
しかも,学費は安くありませんし,せっかくの2年間という貴重な時間が無駄になってしまいます.そんな人を見たくありません.それなら大学院へ進学せずに社会へ出て,色んな経験を積んだほうがよっぽど良いと考えています.
大学院進学を考えている人は,研究生活が充実したものになり,自分の人生にも有益になりそうか,もう一度以下をよく考えて判断してください.
- 研究活動が好きか?長時間1つのことに没頭できるか?
- 現在の分野・テーマ(ロボティクス)に興味があるか?
- 大学院でしかできない専門スキルを身に着け,さらに自分を成長させたいか?
- 「就職活動に有利だから・みんな進学するから・まだ働きたくないから」という単純な理由だけで決断していないか?
博士課程後期課程(ドクターコース)についてはさらに厳しい評価が求められます.そのうちここに書きたいと思います.
学部の成績について
学部3年までの成績はあまり配属後の研究活動には関係ないと考えています.もちろん,基礎学力が高い方が新しい内容の理解に時間を要しませんので,良いに越したことはありません.しかし,学部3年までの成績が良いからといって必ず研究能力が高いというのも間違いです.筆記試験では答えが既に決まっているかもしれませんが,研究に答えはありませんし,誰も教えてはくれません.研究室に入ってからどれだけ前向きに努力できるか?にかかっています.
また,多少の遊び心やイタズラ心も必要です.真面目に努力しつつ,たまに奇抜な発想をすることも重要です.失敗も重要です.最初は何度も失敗してしまうかもしれません.しかし,失敗の中に答えがあることもしばしばありますし,回り道をしている方が問題に直面した時に解決策を思いつく直感力のようなものを養えると考えています.
そういう未知の挑戦を楽しみながら,壁にぶち当たっても自分で考えて努力し,行動できるのであれば,研究室に入った後に大きく成長するはずですし,卒業後も大いに活躍してくれると信じています.モチベーションがあるなら何とでもなります.
学生さんへのメッセージ
ちょっと大袈裟な話をします.これからの日本という国家を支えていくのは若い世代の皆さんです.しかし,日本の若者の数はどんどん減り続けています.私(加古川)の世代では,新生児は140万人ほどいましたが,2022年には80万人を切りました.つまり,非常に荒っぽく言えば私の世代が持っている半分程度の人口で世界と戦わなくてはならない時代がもうすぐ目の前に来ているということです.しかもこの数は減り続けています.
ご存知のように日本は海に囲まれた自然豊かな国です.それと同時に,化石燃料や鉱物などの資源に乏しい国でもあります.そのため,産業力を磨いて外貨を稼ぎ,世界と渡り合ってきました.世の中にない新たな製品を生み出したり,既にある製品であっても性能や生産効率を極限まで高めて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれるまでになりました.
しかし,そんな時代から半世紀が経とうとしています.かつてのメイド・イン・ジャパンはたしかに優れた商品だったかもしれませんが,今ではメイド・イン・チャイナの方が安くて高品質であるケースが少なくありません.メイド・イン・USAやメイド・イン・ヨーロッパも同様です.それだけ猛烈な勢いで海外の国々は鎬を削りながら成長し続けています.
GDPが上がって物質的に豊かになることだけが日本にとって幸福だとは言いません.でも,日本が敗戦後にこれだけの地位を築いた背景には工業の発展があり,世界中に日本製の製品を売り捌けたおかげだと考えています.そんな地位が今では揺らいでいます.とりあえず大学に入ってとりあえず会社に就職して,どこかのお偉いさんの言う事だけを聞いていれば一生安泰なんて時代はこれからどんどん無くなっていくと思います.先人たちが発明したロングセラー商品で食いつなげるだけの賞味期限が迫りつつあるとも言えます.そのため,もう一度この日本という国を盛り上げていかなくてはなりません.そういう意味では,若い世代の皆さんにとっては,今までと異なる色んなチャンスの多い時代と言えるかもしれません.
思い詰めて悩む必要はありませんが,科学技術とどう向き合い,世界にどのようなモノづくりを発信するのか?また,それらを活用してどのような社会を構想するのか?当研究室に来るなら,まさにこの国を背負う当事者としてそんなことも真剣に考えてみてしてほしいと思っていますし,そんなことを語れる哲学的なエンジニアになってほしいと思っています.一緒に頑張りましょう!