食品加工の過程では,粉体(小麦粉や砂糖などの粉状もしくは粒状の原材料)や粘体(アイスクリーム,蜂蜜,ポテトサラダなどの粘り気を持つ液体と固体の中間の性質を持つもの)の運搬作業が必要になることがあります.しかし,一般的な開閉式のロボットハンドでは上手くつかむことができず,負圧式の吸着パッドでは対象物を吸い込んでしまいます.
そこで本研究では,運粘体・粉体を掬い上げて運搬可能なバケット型ローリングハンドを提案しています.容器に入った粘体・粉体を運搬する作業では,表面だけを掬えても意味がありません.ある程度内容物が減ると,容器の底や壁にバケットを擦らせながら掬う必要があります.これを達成するためにバケットにはバックドライバビリティの高いアクチュエータを用いています.
ロボットアーム自体は従来型の固く重いものですが,ハンドが柔軟なので,位置誤差を手先で吸収する仕組みとなっています.また,バケット内には任意の角度に制御可能なヘラが仕込まれており,粘着性のある物体を外に押し出したり,内容物をバケット内で圧縮したりすることも可能です.さらに,粉体や粘体の密度が一様であると仮定できれば,バケット内部に収める対象物の容積を一定にしながら掬い上げることにより,質量推定や定量把持も可能となります.
※本成果は,立命館大学グローバルイノベーション研究機構の川村貞夫特別招聘研究教授との共同研究の結果,生まれたものです.また,本ロボットハンドのアクチュエータには住友重機械工業株式会社が開発する減速機が用いられています.
関連文献
- 伊勢千真,清水悠太,加古川篤,川村貞夫,バックドライブ可能なアクチュエータを用いた粘体・粉体運搬用バケット型エンドエフェクタの開発,日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会,2025