本研究では,内径75 mmの補修弁を通過して検査装置を本管に投入する必要がある流域下水道の圧送管など,特殊な異径T字管路において使用可能な自走式配管内検査ロボットの開発を行っています.
日本の上下水道インフラでは,高度経済成長期以降に整備された管路の老朽化が進んでおり,効率的な点検技術の確立が求められています.特に,ポンプの圧力によって下水を輸送する「圧送管」は,河川や起伏の多い地域で重要な役割を担う一方,管径が比較的小さく,曲管を多く含むため,従来の検査装置では点検が難しいという課題があります.圧送管は大きく,「公共下水道圧送管」と「流域下水道圧送管」に分類でき,前者では当研究室の別のロボット「Xbot」を用いた実証実験を既に開始しております.
一方,大規模な流域下水道の圧送管では,管路の途中に設けられた内径75 mm程度の空気弁や補修弁から検査装置を投入し,異径T字管を通過させた後,内径200~300 mmの本管を走行させる必要があります(※流域下水道圧送管の内径は300 mm以上のものも多数有り).さらに,点検区間が長く,複数の曲管を含む場合もあるため,小さな投入口を通過できるコンパクトさと,大径管内を確実に長距離走行できる能力の両立が求められます.
AIRo-8は,このような特殊な圧送管を点検するために開発している自走式の配管内検査ロボットです.挿入時には身体を鎖のように柔らかくすることで内径75 mmの投入口を通過し,本管への進入後はジグザグ形になりながら管壁に車輪を硬く押し付けることで,内径200 mmおよび300 mmの管路に適応します.複数のユニットを蝶番構造によって連結することで,異径T字管や水平曲管を含む複雑な管路への追従性を高めています.
将来的には,カメラや各種センサを搭載し,これまで点検が困難であった圧送管内部の状態を効率的に把握することで,下水道インフラの予防保全と維持管理の高度化に貢献することを目指しています.
※本成果は,科学技術振興機構(JST)・大学発新産業創出基金事業 スタートアップ・エコシステム共創プログラム スタートアップ創出プログラム 第2回KSAC-GAPファンド「配管内検査装置を用いたインフラ維持管理のための次世代デジタルツイン」の支援を受けました.
関連文献
- 谷口亮太,杉崎雄磨,加古川篤,蝶番関節とワイヤ駆動機構を用いた異径分岐管に侵入可能な配管内検査ロボットー曲管通過性能および牽引力の評価試験ー,日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会,2026,2P2-F12
- 谷口亮太,加古川篤,杉崎雄磨,蝶番構造を用いた連結車輪型配管内検査ロボット「AIRo-8」の開発,第43回日本ロボット学会学術講演会,2025



